第14章 過去
遺言書の内容を思い出す。婚約者の条件を記した3番目の項目。
――五条家の役割のひとつである救済措置で助けを必要としている家系の中から婚約者つまり遊び相手を選ばせること。
これは、曽祖父様が独自に記された悟くんの婚約者に求める条件だ。
お父様は、あたしに悟くんの婚約者っていうわずかな可能性を残して、旅立っていかれた……。
だけど、少し気になる事がある。お父様は五条家の遺言について何かご存知だったのかな?
だって、だって……
お父様は、ずっと……。
隣に座っているお母様と目を合わせる。恐らくお母様の考えている事もあたしと同じだ。前々から不思議に思っていたこと。お母様が悟くんの方に体を向けた。
「あの、坊っちゃん、ひとついいですか?」
「ん、なに?」
「主人は、自分の身に何かあった時は、五条家を頼るようにと、救済を受けるのであれば、他の御三家ではなく、必ず五条家に行くようにと常々私に申しておりました。それとこれとは何か関係が?」
「夕凪のお父さんは五条にこだわってたってこと?」
「はい」