第3章 使用人
その筆頭みたいな女がある日、体育館裏に夕凪を呼びだすってのを耳にしてその場に足を運ぶ。
「五条くんとはどういう関係?」
鬼みたいな顔して夕凪に詰め寄ってやがる。たじろいでる夕凪を見て、言葉を詰まらせてる彼女を見て俺は我慢出来なくなった。見てるだけにするつもりだったけど予定が変わった。2人の元へと足を運ぶ。
「こいつはうちの使用人」
――だから二度と夕凪に近づくな、カス。
「使用人? え、なに、ダサっ……じゃなくて、やだ、そうだよね、てかこれは友達に頼まれただけだからね、私じゃないからね」
ぐだぐだ言って女が去っていく。
夕凪を見ると、この会話から解放された事にホッとしてるような様子。またここで夕凪と話してるとろくな事ねーよなぁと思い、その場から俺は足速に立ち去った。
――使用人。
尊夕凪をそんな風に思った事は一度もない。母親は五条家に仕えているが夕凪は違う。たまに母親の手伝いはしてたけど、それはあくまでもお手伝いだ。俺の遊び相手っていう役目はガキの頃の話だし、使用人という位置づけとは違う。
夕凪は俺が5歳の時から仕込んだだけあって、精度の高い呪力操作が出来ている。
将来はきっと俺と同じように高専に行って呪術師になるんだろうな、俺はずっとそう思ってた。だけど、学校で対等に夕凪と接すれば、その火の粉は俺じゃなく夕凪に飛ぶ。なんでもない会話をすぐに勘違いされる。
だから俺は使用人って肩書きを作ることであいつを守ったんだ。
学校では極力、話さないようにして、顔を合わせてもスルーする。しばらくそれを徹底すると、女達の負の感情は薄まり、夕凪は嫉妬の対象外になったようだ。
さすが俺だよな! 思惑通り。