第13章 幸せのピース
そんな彼女は今、目の前にいる。ベビーベッドや、用意されてる生活用品を見て目を輝かせている。
「すごい」
「これでしばらくは不自由ないだろ。本屋敷の結界の中に夕凪と宝の部屋も準備するから、それまでここで」
「うん、ありがと」
早速、宝をベッドに寝かせてぬいぐるみであやしてる。ベッドメリーのスイッチを入れると、ディズニーのキャラクター達がくるくる回転を始めて、イッツアスモールワールドのメロディが流れ出した。
宝は懸命に目で追ってる。気に入ったようだ。
これらは、夕凪が出産を迎えるであろう10月に合わせて用意した。今から2ヶ月前の話だ。
まだ彼女の居場所は特定出来てなかったけど、分家から夕凪を見たと報告があって、絶対に自分が見つけ出すって覚悟で準備した。
「ちなみに僕の部屋にもベビーベッドがあるから、僕がいる時は、夜はそっちで」
「うん……」
夕凪は少し恥ずかしそうにしてるけど、僕はそのベビーベッドに子供が眠る日が来たのかと思うと、胸がいっぱいになる。
誰も眠っていないベビーベッドなんて寂しい以外の何者でもない。
夕凪は無事に出産したのか、子供は男なのか女なのか、元気なのかどうなのか。何もわからずただベビーベッドだけがそこにある。動物がプリントされた小さな布団と一緒に。
いつもその使われていないベビーベッドを見ながら夕凪と子供のことを思ってた。無事に生まれて、2人とも安全に過ごしててくれって。