第13章 幸せのピース
◇
挨拶と顔見せが終わり、夕凪と離れへ移動する。僕と宝と夕凪の3人だけになった。
ホッと一息だ。肩の力が抜ける。この場所にいると、色んな思いが込み上げてくるけどな。
9ヶ月前、手紙を置いて突然いなくなった夕凪。それを書いたのは、この勉強部屋の机の上だったんだろうと、何か居場所の手がかかりはないかと僕は何度も離れを訪れた。
その度に、椅子に座って勉強してる夕凪が見えたり、急に入ってこないで、とか、悟くんがいると狭い、みたいな文句が聞こえる。
だけど、そこには本人の姿はなくて、亡霊みたいに夕凪の影が漂うだけ。
誰もいないこの静かな6畳ほどの部屋が、僕にもう諦めろって語りかけてくる日もある。一日中探しても見つからねぇ日は、もう一生会えないんじゃないかと、夕凪の名を呼んで辛くなる日もあった。
特級呪霊が突然襲いかかってこようが、呪詛師が束になって術式を放ってこようが、何も動じねーこの僕が、夕凪ひとりの事でこんなに心が乱されるんだと自分で驚いたりもした。