第13章 幸せのピース
夕凪と再会した時、夕凪は変わらないいつもの悟くんだ、と思ってたかもしんねーけど、不安とか押し殺して出さねぇようにしてた。
彼女が誕プレで渡したネックレスをまだ付けてて、心の中にまだ僕への思いがあるのを感じとった時、どんだけ嬉しかったことか。
夕凪が僕の婚約者だなんて、そんなもんこっちの都合で、いくら五条に代々受け継がれてる遺言書を持ち出してきたって、夕凪の気持ちが僕に向いてなければ、んなもんただの紙切れ。何の意味もない。
もし夕凪に新しい男がいたら身を切られる思いだっただろう。嫉妬して殺すわけにもいかねーし、結婚して家族が形成されてたら、宝の事も諦めて、ただ夕凪と息子の幸せを願うしか出来ねー男になってた。
最強だろうが、御三家だろうが、イケメンのGLGだろうが、んなもん何の役にも立たねー。当然、屋敷に連れて帰ることなんて出来ない。
んなこと思うと、使用人たちの涙は、僕の涙腺に訴えるもんがある。泣かねーけどさ。
門に入る前は緊張して縮こまってた夕凪も、熱烈な歓迎を受けて少しずつ笑顔が戻ってきてる。よかった。ここに戻って来た事を喜んでるようでよかった。夕凪を迎え入れる準備をしといてよかった。
分家の連中は夕凪を見て会釈してる。子供を抱きながら夕凪がやりにくそうに礼を返そうとするから、しなくていいと制した。
五条の跡取りを抱く夕凪はもはや本家扱いだ。どっちかといえば敬意の眼差し。分家の奴らは遺言の婚約者を無事迎え入れる事が出来て安心してるんだろう。