第13章 幸せのピース
「ただいま。婚約者、連れ戻してきた」
僕に続いて夕凪が顔を見せると、わあーっ!って言う歓声に包まれる。門に入る前、さんざん気にしていた、ただいまの挨拶は、全く聞こえねー。
夕凪の登場は、ディズニーのパレード、いや、ロイヤルウェディングのパレードに負けねぇくらいの盛り上がり。
彼女が僕の遺言の婚約者だということは、北海道で無事に見つけた時点で、当主を通して屋敷全体に公表した。その時も歓喜の声に沸いたらしい。
ここにきて使用人たちは、僕が夕凪をずっと探していた事を知ったようで「坊っちゃま、見つかってよかったですね」って涙ながらに僕に話しかけてくる。
「最強だから当然だろ」って余裕を見せるけど、本当のところを言うと、焦りしかなかった。
夕凪が見つからねー事もそうだし、時間が経てば経つほど、夕凪はもう僕のことは忘れてんじゃねーか?っていう不安が増水していく。
もし、夕凪が見つかったとしても、もう僕の事を好きじゃなかったら? 他の誰かと結婚してたら? そんな事を考える。
僕1人が強くてもダメなのは経験済み。そして僕が手に入れられるのは、僕に助けられる準備がある人だけだってことも。