第13章 幸せのピース
宝は僕が作った子供。そんで五条の継承者だ。妊娠は全部僕のせいにしたっていいのにそうしない夕凪がまたいじらしい。だから僕も真面目に受け答えする。
「説明も何も、僕らの子じゃん。僕らは遺言にあったように、長い年月かけて "純度の高い深い愛" ってやつを育んで、それで宝が生まれたんだろ? それは普通の恋愛感情とは違うだろ?」
普通の恋愛感情――それが何かと言われれば、明確にこれだって言えるわけじゃねーけど、もう好きじゃないと言われ、あっそって別れるのがこれまでの僕の恋愛だとしたら、夕凪は、どうやって忘れればいいのか教えてくれって、別れ方すらわからないような恋愛。
5歳からずっと一緒にいたからな。急にいなくなった事で、余計に夕凪への思いが募るようになった。
四六時中、頭ん中にいるとか変だろ。硝子が言う溺愛とか過保護ってこれのことか? 反転術式で脳を新鮮にしてんのに、常に夕凪がそこにいる。脳細胞の一部みたいに。
簡単に忘れられるようなら、些細な喧嘩とかきっかけにして、とっくの昔に頭の中から出て行ってる。自分と同じかそれ以上に大切な、絶対に失いたくない存在って感じだ。
夕凪が真剣な顔して口を開く。
「あたしが悟くんを思う気持ちは特別だと思う。うまく言えないけど、自分の一部みたいにいつも存在してて離れられない感覚。この子を授かった時も強く愛してた」
「だろ? 僕も同じだから。秘術が嘘じゃねーなら100パー宝は術式を持ってる。祝福しねぇ奴なんて、屋敷の中にひとりもいねーよ」
おんなじように愛し合ってるのは明白だ。無下限呪術の遺伝にはそれくらいの愛が必要ってことなんだろ。思いを確認しあったところで正門の中に入る。