第13章 幸せのピース
さらに屋敷の奥へ進むと、当主と奥様も外であたし達を待っていてくださった。近くに長老もいる。
悟くんが「お土産なぁ」って北海道のお菓子と遺言書の入ったアタッシュケースを長老に渡した。遺言書を持ち出すなんて前代未聞。長老の血圧が上がったのがわかる。お怒りで顔が真っ赤だ。
「冥土の土産になるとこでしたぞ」
「説教は後でたっぷり聞くから。あ、夕凪も一緒なー」
忘れてた。共犯にされたままだった。最後の部分はどうか聞き取れていませんように!
遺言書を手にした長老は、急いでそれを屋敷に運ぼうとしている。二度目がないようさらに厳重に管理するはずだ。その表情は険しい。
また寿命を縮めてしまったと、申し訳ない気持ちで長老を見ていると、大きな咳払いをひとつして、急にこちらに顔を向けた。
「坊っちゃまと夕凪様の幸せに免じて今回だけは許しましょう」
信じられなくて悟くんと顔を見合わせる。そんなあたし達に長老はニッと一瞬笑みを見せて、そそくさと屋敷の中へ入って行った。