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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第13章 幸せのピース


 二の足を踏んでるあたしを見かねたのか、悟くんが一歩こちらに近付いてあたしの顔を覗きこむ。

「夕凪、オマエは使用人の娘じゃなくて、五条の遺言書に記されてた婚約者なの。いなくなったオマエを僕が探すのも当たり前。オマエがいなかったら僕は誰と婚約すんの? ただいまでいいんだよ」

「……うんでも……この子はどう説明すれば」

「説明も何も、僕らの子じゃん。僕らは遺言にあったように、長い年月かけて "純度の高い深い愛" ってやつを育んで、それで宝が生まれたんだろ? それは普通の恋愛感情とは違うだろ?」

「あたしが悟くんを思う気持ちは特別だと思う。うまく言えないけど、自分の一部みたいにいつも存在してて離れられない感覚。この子を授かった時も強く愛してた」

「だろ? 僕も同じだから。遺言の秘術が嘘じゃねーなら100パー術式も持ってる。祝福しねぇ奴なんて、屋敷の中にひとりもいねーよ」

 もう一度頷き、悟くんに背中を押されて、宝を抱いて歩き出す。ただいまって、心の中で発生練習をしながら。

 悟くんが先にお屋敷の門をくぐった。

「ただいま。婚約者、連れ戻してきた」


 彼に続いて門をくぐり、小さく一言つぶやく。

「ただいま」

 けど、蚊の鳴くようなその声は、おそらく最初の、た、すら聞こえなかっただろう。残りは完全にかき消されてしまった。

「夕凪!」

「おかえりー」

 大勢の出迎えの声と、歓声と拍手。宝はびっくりして今にも泣き出しそうだ。これまで静かなところにいたから無理もない。

 抱っこしながらトントンしてなだめる。そこには歓迎という言葉がふさわしい光景が広がっていた。

 あたしを探していたという分家の方も何人か来られていて、あたしに向かって会釈してる。

 嘘でしょ? もっと深いお辞儀で返さなきゃと、慌てて前屈みになると、しなくていいと悟くんに言われた。

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