第3章 使用人
「くくっ、ぶっさいく」
今撮った2ショット写真を見てるのだろう。彼は余計なひとことを言い始めた。
自分の顔見てぶっさいくとは言わないだろう。あたしのことだよね。
おかわりって言ったからわざわざお茶を注ぎ足しに来たのに! あたしを何だと思ってる? ひっど!
悟くんが写真を眺めている間にあたしはペットボトルからカプカプカプとグラスにお茶を注ぐ。
悟くんは機嫌よく笑ってる。だけど、グラスを手に持ち、彼の元へ運ぼうとした時、その表情はかげりを見せていた。
さっきまで緩んでた穏やかな表情が嘘みたいに面白くない顔してる。気のせいかな、呪力の流れが速くなったような……。
「こいつと付き合ってんの?」
悟くんが携帯の画面をあたしに見せてきた。――卒業プロジェクトの、隣のクラスのイラストが上手なあの男の子との写真。
すぐ横にあたしがいてあたしとその子は弾けんばかりの笑顔で頭を寄せ合って映ってる。ピースサインしながら。
悪ふざけして撮っただけの写真。特別な意味なんかない1枚。
「付き合ってないよ」
「なのにこんな顔すんのかよ」
携帯を握りしめる悟くんの手がぎゅっと強くなり小刻みに揺れている。それ以上握ったら壊れちゃうよ……。
「悟くん、ねぇ」
その時、パリッと嫌な音がした。
続いてパシッ。
開閉型の携帯が閉じられた音だ。悟くんから床に向かって放物線を描く様に携帯が投げられる。
コトン。
携帯がフローリングに着地すると彼は真っ直ぐ立ち上がった。
え、待って、今のパリって、なに?
お茶どころじゃない。グラスを置いてあたしは慌てて駆け寄って、無造作に放置された携帯を手に取り、恐る恐るそれを開く。
――画面が割れていた。放射線状にヒビが入ってる。