第12章 ★ハワイ旅行
チェアーに斜めに横たわった夕凪は、どこか眠そうで目をこすっている。ハワイ初日で時差ボケもあるんだろうな。
「適当に飲み物買ってくるからそこにいろよ」
「いいの?」
「すぐ目と鼻の先だし」
「じゃあお願いします。ジュースなら何でもいい」
ドリンクカウンターは数十歩行った先だ。 ここはホテルだし、宿泊客専用だし、少し僕と離れてもこの距離なら不安じゃねーだろ。
――だけど、飲み物を買って戻ってみたら、不安になったのは夕凪じゃなく僕の方だった。ほんの7、8分? 10分も経ってねーと思うけど、夕凪? オマエはなんちゅー格好してんの?
リクライニングチェアーの下をのぞき込むようなしゃがみこむ体勢してる。正面から見たら胸見えんじゃねーか? さらにそこから、何かに手を伸ばすように体を伸ばして、四つん這いの姿勢になった。おいおい!
うーんってリクライニングチェアーの下に手を伸ばしてる。
無防備すぎるその格好の彼女に慌てて近づこうとすると、夕凪に被さるみてーに、褐色肌の男が覆ってきた。片手はリクライニングチェアーにかかってるけどもう片方の手は夕凪が手をついてるすぐ横にあって四つん這い。
何見せられてんだ。
脳内でプツン って音がした。