第3章 使用人
月日はあっという間に流れた。
悟くんの中学卒業が近付き、五条家では東京都立呪術高等専門学校への入学準備が進む。
表向きは宗教系の学校。だけど中は本格的な呪術師養成の学校だ。悟くんがずっと行きたいっていってた学校。
年が明けた頃、高専の制服が届いた。
「わぁー」
めちゃくちゃカッコいい。こんなの着て呪霊討伐を行うのかぁ。
でもちょっとだけ心配だ。悟くんを守って、と制服に向かってお願いする。
必要ないか。自分でも、俺、高専でも既に最強でしょって言い放ってるくらいだし、中学でもお忍びでたくさん祓ってるからなんともないだろう。
卒業生を祝う会の準備でいよいよあたしは学校が忙しくなった。
一緒に係になった隣のクラスの男の子が「あー、笑い声響いてきた子」と初対面から失礼なこと言ってきたけど、なかなか彼は優秀でイラストとか描ける。
卒業生全員の顔描こう! ということになり横断幕にいっぱい名前が並んだ。
あたしは絵が下手くそだ。全然特徴を捉えられなくて全員おかめ納豆みたいな顔になる。
納豆は余計か、おかめね、おかめも人間じゃないぞ。ま、いいや。
でも、五条悟……その名前を目にしたら描きたくなった。小さい頃から見てきたから描けるだろう。
「五条悟はあたし担当させて」
「え? 五条さんってイケメンの人でしょ? ちょっと怖そうな。綺麗に描かないとダメだからやめたら?」
「どういうことかな? それはあたしが絵が下手くそって言ってんのかな?」
「自覚あるんだ、あはは」
なんかちょっとそのいじり方はうちの次期当主に似てるけど言葉は優しい。
ふふふって笑えるだけの余裕を持たせてくれる。あたしは絶対上手に描くから! と悟くんを担当させてもらった。
早速下書きしてみるが……。
全然わからない。え? どんな顔だったっけ?
最近、あたしの反抗期がひどくて、無視しすぎて顔を忘れかけてる。あの綺麗な六眼は覚えてるけど。