第3章 使用人
悟くんはそんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、やりたいようにやっていた。
あの一連のご褒美キスのやり取りの後、彼女が出来たみたい。中学生活も残り1年を切ってる。まあ、わからなくもない。
悟くんと並列して歩く彼女を目にするとつい唇に目が行ってしまう。
――ご褒美にキスあげたのかな?
別にどうでもいいんだけど。この彼女もいずれ悟くんとは別れなくてはならないのだ。五条家の婚約者にはなれない。
あたしは悟くんと違って、というと怒られるだろうけど、真面目にお勉強もした。婚約者の事を知ってからは特に。あたしの将来はきっと呪術師か五条家の使用人。
でもそれって常に五条悟がつきまとう。
ワンチャン、ひょっとしたら、勉強して大学に行けば一般の会社に就職するOLさんになれるかもしれない。五条家で働くよりお給料断然低いけど。呪術師の稼ぎからしたら雀の涙だけど。
でもOLになればそこに悟くんはいない。悟くんから離れられる。側にいて見たくないものを見るよりいい。
見たくないもの……それが何かは今、考えたくない。
だから一生懸命、学校で頑張ってたらまた別の世界があたしを包んだ。合唱コンクールとか体育祭とか。
生徒会活動にも積極的に参加しちゃったりして思い出が増えていく。楽しくてたくさん学校で笑いすぎて、隣のクラスまで響いてるぞって先生に怒られた。
帰りもずっと友達と喋ってて、なかなかバイバイ出来なくて気付いたら、辺りが真っ暗なんてことも。
生徒会の用事で上学年の階に行くと、どうしたって長身イケメンが目に入る。彼の隣りには、前見た彼女とは違う女の子がいた。見るたび違う女の子の様な気がする。
取っ替え引っ替え楽しんでるのかい?
いい顔に生んでもらってよかったね、悟くん。
廊下で彼女と前方から歩いてきたから、ちらっとだけ見てすれ違う。
そんな風に女の子と遊んで、楽しい中学ラストライフを楽しんでるはずなのに、お屋敷にいるとやたら機嫌が悪いのはなんでだろう?