第11章 急展開
「誕生日なのにこんなメニューでごめんね。ケーキもないし」
「突然来たんだから、ごめんとかねーだろ。うめーよ普通に」
「ありがとう。誕プレも用意してないや」
「用意してる方が、怖ぇーだろ。なにより夕凪と子供が手に入ったしな」
嬉しいこと言ってくれる。こういう時の悟くんはとってもかっこいい。
唐揚げが美味しいみたいで「はい」ってあたしの分をひとつあげた。さっそくそのお肉を一口頬張ってる。
「そういや子供の名前は? つけてあんだろ?」
「え? うん。出生届出さないといけなかったから、あたしが名付けた」
「なんて名前? さぞかし夕凪のネーミングセンスが光ってんだろーな。ひゅーして、だもんな。ノートのタイトルも書の練習用、ってまんまだし」
「いじってんの? そんな事言うなら教えない」
「あ゛教えなかったら呼べねーだろが」
悟くんが意地悪言うからじゃん。軽く拗ねた。ネーミングセンスがないのは重々承知だ。でも、息子の名前はあたしは夜通し考えて、これしかないって、もし、万に一つ、悟くんがこの子に会うことがあったとしても、きっと喜んでくれるだろうってそう思って付けた。悟くんがひらめいたみたいに指を鳴らす。
「わかった、一郎だろ」
「違う」
「一男」
「違う」
「一」
「あたしのことなめてるでしょ」
悟くんの湯呑みも空っぽになってたけど、あたしは自分の湯呑みにだけお茶を継ぎ足した。
「悪かったよ。なぁ教えて、どんな名前でもぜってーdisったりしねーから」
悟くんを怪訝に見つめて不機嫌をアピールする。しばらくそのままでいて、反省してほしかったけど、なぁ、なぁ、って執拗に聞いてくるし、今日誕生日なんだけど、って言うキラー用語を使うから仕方なく観念した。悟くんの湯呑みにゆっくりお茶を注ぐ。