第11章 急展開
付記事項
五条家の術式相伝が、これまで途絶えることなく、遺言により継承されてきたその秘術は、無下限呪術の遺伝的特質に「愛」が大きく関与していることにある。
これまでの五条の長い歴史の中で、愛のない政略的婚姻も幾度となく行われたが、愛情的つながりが薄ければ薄い婚姻ほど、無下限呪術を相伝する子が生まれる確率が下がった。
純度の高い深い愛で結ばれた夫婦は、呪力を伝ってその愛情が生殖細胞に流れ込み、無下限呪術の遺伝子に働きかける。2人の愛が重なる事により、無下限呪術の相伝が子へと成される。
これは五条家の何百年の歴史の中で、先代たちが目の当たりにしてきた事実であり、継承すべき「術式相伝の秘術」である。
五条の人間は代々、目がいい。例え五・六といった齢であっても自らの目で選んだ時点でふさわしい婚約者を選ぶ力を持っている。
幼少期は、地位、名誉、富、といった副産物を度外視し、純粋な目でもって互いを見る。婚姻の適齢期になってからの愛情関係よりも純度が高い愛を育むことが多いため、当該遺言の内容となっている。この点を五条家を継ぐものとして肝に銘じ、未来永劫受け継ぐようここに記す。
さらに愛で満たされた家というのは、全てが潤う。中で働く人間も、関わる外の人間も。ゆえに万人の心の負担が少なく、問題や争いが起こる事も減り、すさむことなく栄えていくだろう。
ただし、一つだけ重要な注意点がある。