第11章 急展開
あたしが悟くんの婚約者だった? あたしが見た遺言書にはそんなこと、一切書かれてなかった。あの巻物は偽物だったの? 悟くんの署名がされていたのに。それに……
「婚約者候補を集めたパーティは、あれは、じゃいったい何だったの?」
「あれは夕凪が僕と別れるって言ったから、それで急遽、開催されたんだよ。代わりなんて見つかるわけもねぇのに」
「そ、んな……」
混乱して茫然自失の状態に陥る。何かの間違いじゃないかと、目の前の悟くんを何度も見るけど、真剣な表情で語る様子は変わらない。
「ただ、遺言書の婚約にはひとつ条件があって、婚約者の同意がないと成立しないんだよね。婚約者の気持ちが最優先ってことになってる。だから夕凪にその気がないならこの話はおわり」
手をひらひらさせる悟くんを見ながらこれまでの行動を振り返ってみる。当主はあたしに悟くんとの関係を尋ねてこられた。悟くんはありのままを言えばいいって事前に教えてくれた。
けど、あたしは、婚約者は自分ではないと思っていたから、悟くんと当主の会話をこっそり聞いてしまったから、これ以上迷惑かけまいと思って別れるって答えた。婚約の話はそこで止まってしまった?
「あたし、別れるって言ってしまった。悟くんとの恋は期間限定だったって」
悟くんの遺言のお相手があたしだったらいいのに、ってこれまでどれだけ思った事だろう。悟くんに遺言の開示がされてからは、あたしが婚約者なんじゃないかって本気で思った事もあった。まさか、それを自分の手で壊してしまっていたなんて。