第11章 急展開
「僕の婚約者は今年はどんなお祝いしてくれんの?」
「……あたしに聞いてる? そんなの知るわけないじゃん」
「婚約者に聞いてんだよ。直接、今」
「……意味わかんない。ここにはあたししかいないよ」
両肩に悟くんの手が置かれた。青い瞳に映り込んでるあたしがさらに大きくなってる。
「まだ、わかんねー? 遺言に書かれてた婚約者はオマエだよ、夕凪。さらに言うなら生まれた子は、無下限呪術の使い手だ。術式は遺伝してる」
耳がおかしくなったのかな? 悟くんが変なこと言う。まるで知らない外国の言葉を話されたみたいに聞こえた音の意味が、理解できない。
「なんていったの? もう一回言って」
「僕の婚約者は夕凪だって言ったんだよ。夕凪しかいねーに決まってんだろ。じゃなきゃ、遺言書に同意なんかするかよ。子供作るような真似するかよ」
「うそ」
「嘘じゃねぇよ。オマエは――夕凪はずっと前から僕の大切な婚約者だったんだ」
あまりの急展開に心が追いついていかない。
「そんな話……一度も聞いたことない」
「僕も聞いたことなかったから、当然夕凪はそうだろうな。本家は遺言に従って、徹底して隠してたみてぇだし」