第11章 急展開
悟くんから赤ちゃんを引き離すかのようにベビーベッドに移動して、子供をそこに寝かせた。もう一度、心を立て直して、悟くんの方に向き直る。
「悟くん、ありがとう。直哉さんのことを聞きつけて助けに来てくれたんだよね? 子供も可愛いって言ってくれてありがとう。もう十分」
「もう少し早く見つけるはずだったんだけどな。子供が生まれる前には見つけたかったけど、思った以上に手こずった。悪りぃ」
「ううん、見つからないようにしてたのはあたしだし……かっこよかったよ。助けてって、あの時、悟くんのこと呼んだの。そしたらほんとに来てびっくりした」
「惚れた? ってそんなの聞くまでもねーか。もう惚れてるもんな」
……。今のは冗談なのかな。全く笑えないよ悟くん。婚約者がいる人が言うことじゃないよ。
「惚れてないから……」
「嘘つけよ」
「嘘じゃない。ほんとに好きじゃない」
「まだこんなの付けてんのに?」
彼の太い指があたしの首筋に触れて、鎖骨を撫でるようにしてチェーンが取り出される。オープンハートのネックレス。誕生日プレゼントに悟くんからもらったネックレスだ。今も外せないでいた。
「僕のこと忘れてないってことだよな?……嬉しいんだけど」
「……どうして、そんな事言うの」
「夕凪が好きだからに決まってんだろ」
胸が締め付けられる。あたしに向けられているのは付き合っていた頃と変わらない、最後にあたしを好きだと言ってくれたあのパーティーの日と変わらない真っ直ぐな青い眼差し。