第11章 急展開
「寝顔がタヌキみてぇだな」
ん? 今なんて言った。聞き間違いか? あたしにも前、おんなじこと言ったよね? あたしはともかく、自分の子に向かってなんてことを! こんな可愛いのに!
「そんなわけないでしょ。タヌキなわけない」
「この餅みてぇな頬っぺたとか、ちっちゃい鼻とか」
「ぜんぜん違う。ちゃんと見て。顎のラインなんか悟くんにそっくり! 骨格もパーツもそっくりなのにタヌキなわけない! 生まれた時からスーパーイケメンの男の子だった」
ククッて悟くんが笑う。
「言われてみりゃ僕に瓜二つだな。そうだよなーイケメンだよなぁ。だって僕の子供だもんなぁ」
「……あっ」
しまった。これじゃ悟くんの子だって言ったも同然だ。どうしよう、どうしよう。慌てるあたしを見て悟くんは肩揺らして笑ってる。だけどその笑みは意地悪っていうより、楽しげな嬉しそうな笑み。
「触っていい?」
「うん、っていうかもう触ってるよね」
許可を取る前に手を伸ばしてるあたりが悟くんらしい。指の腹で頬っぺたツンツンしてる。親子3人でいるなんて夢みたい。
ひとりでいる事には慣れたはず……なのに、愛する人がすぐそこにいるっていうのは、どうしてこうも幸せな気持ちになるんだろう。安堵感に包まれて、ふわふわの羽毛にくるまれたようなあたたかな気持ちになる。
一緒に赤ちゃんを眺めてると、グーの手して万歳してる赤ちゃんの手に悟くんの人差し指が入りこんだ。
「ぎゅって握ってくんだけど、力、強ぇーな。やっぱ最強の子だよなー」
「それが普通の反応だよ、力も普通」
「んなわけねーだろ、全然離さねーし強ぇーよ。……髪は僕と同じ白色なんだな。なぁー、髪、薄くね? まさかハゲじゃねーよな?」
「ハゲじゃない!! まだ2ヶ月なの。これからガンガン生えてくるから!」
「あ、起きたみてぇ。こっち見てんだけど! 可愛すぎんだろ、こんな可愛い赤ん坊いねーだろ? 世界一だろ?」
「それは同感! 世界一、宇宙一可愛い! 神をも超えた天使!」
「だよなぁ」
親バカだ。2人して何言ってんだ。悟くん、ありがとう。そんな風にテンションあげてくれて。
―― きゃっきゃっはしゃいでしまったけど、悟くんには婚約者がいる。これくらいにしとかないと。ひとりになった時に凹むのが怖い。