第3章 使用人
五条家の使用人に採用されて、屋敷に来た時にお母様から言われた言葉。
「坊っちゃまに気に入られたらきっと未来の奥様のお世話も任せられるから。夕凪、仲良くね!」
未来の奥様……悟くんの未来、悟くんが作る家庭は五条家が決めるんだろうな、そんな気がしていた。
悟くんのお嫁さんの着付けやお食事をあたしが手伝って、子供が生まれたらそのお世話もする。
あたしみたいに長年、五条家に仕えていて信頼できる人物を配置するに違いない。
そういう意図もこめられてあたしがまだ5歳だったあの時から長期的な五条家の計画は組まれたのかもしれない。
怪しい人物は一切いれない簡単に入り込めない家系だ。
結婚してあたしが五条家を出て行けば別だけど、もし使用人同士で結婚したり、五条家と縁の深い呪術界の誰かと結婚して、旦那さんもろとも屋敷に住むようになったりしたら、あたしはいよいよ一生、悟くんの孫の代まで面倒をみているのかもしれない。
多分、お屋敷の中では一番気の置けない関係だから。
そんな未来をいつも想像していたわけではない。どちらかというと考えないようにあたしは過ごしていた。先が決まっている未来は面白くない。
でも、悟くんのファンの口から出てくる「婚約者」って言葉がいったん頭に留まるとぐるぐる五条家の未来を考えてしまう。