第11章 急展開

「これ言うの2回目だから」って彼はこちらに近付いてくる。

「蔵で隠れんぼの次は、こんな寒いとこで隠れんぼ？　ほんっと手ぇかかる奴。見つけんのすっげー大変だったわ」

　あたしを押し倒した状態の直哉さんが振り返って、慌てて体を起こす。あたしもそれに合わせて体を起こす。じりじりとお尻をずらして、座ったまま移動し、壁に寄りかかる。触られたところが気持ち悪くて仕方ない。

「さ、悟くんやんか、こんにちは」
「何やってんの？」
「何って、ちゃうねん、ちょっとコケただけやから」
「表にいた奴が、お楽しみ中って言ってたけど」
「……お楽しみって、誤解やて、これは同意のもとや！　なぁ？　同意のもとやったやんなー？」

　あたしの方に向かって直哉さんが言ってくるけど何も言葉が出ない。出るわけない。ただ涙しか出ない。

「まだ何もしてへんし。キスもしてへん。ほんまや。それに悟くんが捨てた女やろ？　別にえぇんちゃうの？」
「おい、どっちがいいか選ばせてやるよ」
「あ？」
「無量空処で死ぬか茈で死ぬか」
「ちょ、待って、な、なぎちゃんもなんか言って」

　こんな時に言う言葉はひとつだ。
「今すぐ死んで」
　あたしは思いっきり叫んだ。

「だってよ」
「ちょ、なぎちゃん、もう二度と近寄れへんから、ここの土地の権利書も渡すし、その子のオムツ代も全部出すわ」

「オムツ代ってケチすぎんだろ」って悟くんが一言漏らすと、直哉さんの両腕がひねられて、ぐにゃっとなる。雑巾しぼりみたいに、ぐにゃぐにゃだ。直哉さんが大きな悲鳴を上げる。