第11章 急展開
直哉さんが足が速いのは知ってる。この子を守りながらまともに戦えたりはしない。だけど落下の情で、カウンターは防げる。術式と合わせて直哉さんから身を守る。
この子を禪院家に連れて行くなんて、意味が全然わからないしありえない。なんなの? なんで?
「なんでこの子なの? 禪院家には関係ないでしょ?」
「無下限羨ましいねん。禪院家にも血筋残したいやん?」
「この子は無下限呪術は継承してない」
「は? なんやて」
どうやら、五条家の無下限呪術が欲しかったみたいだ。なんて勝手な。なんて愛のない。ただの術式狂いだ。
「仮に術式を持っていたとしてもそれは尊家の術式。直哉さんが欲しいものとは違う」
「……またまたなぎちゃん、嘘言わんで! 騙されへんで。五条の本家で生まれた子供は、みーんな無下限持ってるって聞いたで。なぁ、そーやろ?」
近くにいる丙の部下みたいな男に質問を投げると、男が「そのはず」と言う。ふんとあたしは鼻を鳴らす。
「その部下の人、使えないんじゃない? 無下限を持って生まれてくるのは遺言に書かれた婚約者の相手との間に生まれた子供だけ。あたしみたいな、なんでもないおさがりは、無下限の遺伝率がグッとさがるの。実際に5歳くらいにならないと術式持ってるかなんてわからない」
「なんや、その情報、ほんまか!?」
「ちゃんと調べたらわかるはず。五条家の江戸中期以前の歴史を」
「顔だけ悟くんに似てて術式ないとか、かっこ悪すぎやろ!」
大きなため息をつかれた。ひどい事を言う。さっきから超失礼だ。この子に謝ってほしい。こんなに可愛くてかっこよくて悟くん超えしそうな位の顔立ちなのに。
「ひどいおじちゃんだねー。気にしないで」
抱っこしながらあたしは子供に話しかける。直哉さんは、めったくそ部下の男の人を「オマエが悪いねん」って蹴り飛ばしてる。調査が甘いって、脳みそほじくるぞって。こんな家に絶対、子供を渡したりなんかしない。あたしと悟くんの大事な子供を。