第11章 急展開
「そんな怖い顔せんでもえぇやん。やっぱり悟くんとの子供やったか。おめでとう。お祝いしに来たんやで」
嫌な予感しかない。お祝いなんてしに来るわけない。それにここを知ってるのだって、よっぽど特殊なルートで聞き出したに違いない。「赤ん坊の顔見せてー」って言うから「嫌です」って言って阻止したけど、ベビーベッドの上からのぞいてくる。あたしは赤ちゃんを抱っこして直哉さんから離した。
「うわー、悟くんにそっくりやんか!」
「ここに来た理由はなんですか?」
「あんな、ここの土地、宗教団体から禪院家が買い取ってん。たまたまアイヌ呪術連の奴らから話聞いてな。たっかい金出して買ってん」
「……」
「だから、君ら住むとこないやろ? でな、なぎちゃんは、札幌市内のええマンションでもこーたる。ほんでこの子は、禪院家に住まわせたるわ」
「なに寝言、言ってんの?」
直哉さんは、悟くんとあたしの子供を奪いに来たような言い方をする。なんでそんな?
「親子一緒に暮らせんでごめんなー。なぎちゃんは、悟くんが手ぇつけたおさがりやんか? いくらおさがり言うても、禪院家連れて行ったら目立つやん? 五条家と揉め事起こしたくないねん」
「だったら、この子だって同じでしょ。目立つし、五条と揉め事になる」
「この子は誤魔化せるやん? まだ口きかれへんし。すり込んで小さい時から禪院家の子供やって言うて聞かせるから。五条は敵やって」
「なにいってんの? そんな勝手なことさせない」