第11章 急展開
そして10月。
『夕凪、産みます!』
はついにその日を迎えた。
陣痛が来て、あたしは清水寺の安産祈願のお守りを握りしめてタクシーで病院に向かった。
出産はお勉強して頭に入れていた事よりも大変で、辛くて、痛くて、なかなかすぐには生まれてくれなかったけど、それでも陣痛が来たその夜には、産声をあげてくれて、あたしは赤ちゃんとご対面した。
「……可愛い。めっちゃくちゃ可愛い」
ちっちゃな手足。ぷにぷにの頬っぺた。お猿さんみたいなの想像してたけど、悟くんに似てすでに整った顔立ち。白い髪とまつ毛。目はあたしと同じ深碧。性別はエコーで見た通り、男の子だった。
「ぅぎゃぁあー、んぎゃあー」
元気に泣いてる。可愛いくて可愛くてあたしは抱きしめながら、涙があふれて止まらなかった。
「ありがとう、生まれてくれて。悟くん見守ってくれてた? 可愛い、すっごい可愛い子だよ」
"パパ"
悟くんの事を初めてそう呼んでみた。