第11章 急展開
そのまま大通りを歩く。少し気持ちを整えてから家に戻ろう。このまま帰ったら大泣きしてしまいそうな気がする。何か映画でも見て帰ろうかな。現実を忘れたい。
トントン、と2回肩を叩かれた。
後ろを振り返る。
「夕凪か? 本家の」
思わず息を呑む。五条の分家の方だ! 一度も話したことはないけれど顔は知っている。
「あ、あの」
「悟がずっと探してる。戻ろう」
「え? どうして」
「ここは人が多いから事情は戻ってから」
悟くんがあたしを探してるってどうして? 居なくなった直後は気になって探したかもしれないけど、もう日が経ってるし、婚約者を決めていく中で、忘れ去るべき存在になっていたと思っていた。
想像してなかった言葉に少し心が揺れる。だけど、婚約者が決まったんだよね? さっき高専の子達がそう言ってた。
「行こう」って腕を引かれて、思わず分家の方に術式を放ってしまった。ごめんなさい。少し火傷させたかもしれない。
あたしは分家の方が怖かった。連れ戻してあたしやこの子が消されるんじゃないかって。
悟くんが探してるなんて嘘で、分家が本家を守るためにあたしを探してるんじゃないかって。邪魔な存在のあたしを。
中心街を離れ、家屋に戻る。遠くの空を見ると花火が上がっているのが見えた。鮮やかな色とりどりの火花……。悟くんと見た秋の花火を思い出す。
この空の下に悟くんはいるんだよね、それでいい。それだけでいい。夜空を見上げたら少し元気を取り戻した。結界の鍵を出して家屋の中に入る。
お茶を飲もうと座るとお腹の内側からモゴモゴしたものを感じた。動いてる。胎動だ。あたしに元気だよって言ってくれてる。励ましてくれてる?
あー、可愛い。
お腹に手をあてるとボコボコ蹴ってるような感覚があった。悟くんに似て、やんちゃで優しい子なのかな。