第11章 急展開
7月。
プレママ教室に行ってみる。地域のボランティア主催みたいだ。1人参加にはだいぶん慣れてきた。
ミルクの作り方とかオムツ替えとか抱っこの仕方とか泣き止まない時なんかの対処法の話もあった!
座学だったから、あたしはちゃんとノートに取ったよ、悟くん。午後のいっちばん眠くなる時間帯だったから、悟くんが来たら、夕凪は真面目だよなって言って隣で寝てたんだろうな。
帰り際に男の人に呼び止められる。母子家庭の支援制度があるからって、お金の話みたいだ。一通り説明を受ける。資料を読めばわかりそうだったから軽く聞いて席を立った。
「もっと別の支援金もあるけど興味ない?」
「あ、えっとお金にはそこまで困ってないので大丈夫です」
「お金、だけじゃなく、生活とかもろもろ」
「はい?」
「パパ活してんじゃないの? 大変でしょこれから。月10万くらいなら渡せるよ、週1でどう?」
男の左手の薬指にはしっかり指輪がはめられている。それを分かった上でって話だ。馬鹿にしてる。あたしが黙ってると追い討ちをかけてくる。
「そんな子供を認知出来ないような男より、ずっと僕の方がいいと思うよ。ちゃんと避妊するし、金もあるし、エッチも上手いしね」
「お金にも男にも困ってませんから。二度と声かけないで」
「無理しなくていいのに」
あたしは素早く教室を出た。悔しくて涙が溢れるのを腕で拭う。そんな風に見下げられてるなんて子供が可哀想すぎる。悟くんはそんなんじゃない。
そんないい加減な他の誰かと一緒にしないで。五条家のためを思って遺言を守ったの。あたしのことだって、最後まで好きって言ってくれたの。
悟くんはそんなひどい人じゃない。お金だって、あんな人より100万倍お金持ちだもん。第三者から見たらあたしは、遊ばれて捨てられたようにでも見えるんだろう。
そうかもしれない。でもね、あたしは、悟くんが大好き、今でも。