第11章 急展開
非術師の彼女がいたの? 夏油先輩が抹殺しようとしてる非術師? それはあまりにも切ない。自分の事はさておき夏油先輩の恋に泣きそうになる。結ばれない境遇が自分自身と重なったのか、夏油先輩は金庫らしき扉をあけて書類と鍵を出してきた。
「ここを使うといい。解散した教団が使っていた家屋で、結界が二重構造になっている。一つ結界が破られてもダミーの施設が存在していて、管轄はアイヌ呪術連だ。高専が関わることは少ないから見つかりにくいだろう」
「どうして、こんな……いいんですか?」
「困ってるんだろ?」
「そうですけど……あたしが使うわけには」
「宗教的な用途で使っていただけで呪術界とも私とも関係ない家屋だ。問題ない」
「あの、お金はどうすれば」
「一括で振り込んでもらおうか、とでも言いたいところだけど必要ない。私の所有する建物ではないからね。それに私に資金を調達したなんてことになれば、尊も処罰対象になりかねない。ここは、かっこつけさせてもらうよ」
「それじゃあまりにも申し訳ないです」
「水臭いことを言うね。君はかつての後輩そして親友の恋人じゃないか」
「もう恋人じゃないです」
「そうかな? 君はきっと今も恋人だよ。悟は尊を今も思ってる。この話はきっと何か裏があるんじゃないか? あいつはすべて承知の上で尊と付き合ってた。いい加減な気持ちではなかったと思うがね」
「どうして夏油先輩にそんなこと言えるんですか? ずっと会っていないのに。悟くんは変わってしまったっていうのに」
「わかるさ。悟は、私の親友だったんだ」