第11章 急展開
向かった先は京都。急に五条家を飛び出してきたから、当てがあったわけじゃない。だけど、京都には庵先輩や冥さんがいる。
おふたりなら、事情を話さずとも1日や2日くらいはかくまってくれるだろう。その間に住むところを探せばいい。そう思っていた。
だけど……
甘かった。
甘々だった。
全くもって甘すぎた。
まずもって、高専関係者に頼ろうとした時点で甘い。電話をする直前にふと手を止めて、考えた。既に悟くんから連絡が来ていたらどうしよう。「夕凪が来たら教えて」って。庵先輩も冥さんも、悟くんからの誘導であっけなくあたしはお縄だ。
庵先輩の場合は「夕凪見つけてくれたら尊敬しかねーわ。先輩って認めるしかねーよな」なんて悟くんが言ったら先輩魂に火がついて、うっかりあたしの事を話してしまうかもしれない。
冥さんの場合は、もっとさくっとあっさりと「五条くんが相手だったのが運の尽き。許しておくれ」なんて妖艶な笑みを浮かべて、直接取引で、現金と引き換えにあたしを悟くんに引き渡すんだ。「冥さんサンキュ」って悟くんがあたしを引っ張っていくのが想像出来る。
結局ビジネスホテルに宿泊することに決めた。ひとりでホテルに泊まるのは初めてだからか落ち着かない。壁に掛かってる絵画がムンクの叫びに似ていて怖い。
夜になるとオバケが出そうでやたら心細い。ベッドの下になんかいる。呪霊ならやっつけるけどきっと違う、そんな気がしてしまう。窓の外を見ると知らない景色が広がっていて漠然と不安になる。
「悟くん……」
一番つぶやいちゃいけない言葉が出てしまった。そっと下腹部に手を当てる。
「弱気になってごめん。守るからね」
まだ聴覚なんか発達していないだろうけど、あたしは彼の子供に話しかけた。