第11章 急展開
翌日。
「とりあえず、住むところをなんとかしなきゃ」
子供と暮らすためのお部屋探しに市内へ出る。賃貸契約でアパートの一室でも借りようと、テレビのCMで見るような不動産仲介業の店舗に入ってみた。
「いらっしゃいませ」
受付のお姉さんが愛想良く出迎えたと思いきや、それは最初だけで、結局あたしは紹介してもらえず店を出ることになる。別の不動産仲介業の店舗にも入るけどやっぱり同じ。もう一件回るけど、そこも同じ。
――甘かった。
あたしは未成年。18歳。賃貸契約するのに親権者、もしくはその代わりとなる人の同意が必要だと言われ、入居審査に通らない。
収入も、現在無職のあたしはいくら貯蓄があると言っても、首を縦には振ってもらえず、まして、前職が呪術師なんて特殊な仕事、誰も知らない。オカルト関係か怪しい占い業か何かとしか思われないだろう。
子供が生まれるから住居人数は二人なんて馬鹿正直に言わなきゃよかった。ひとりで住むって言えばよかった。訳ありな家出娘だと思われた……っていうか、あたしは訳ありな家出娘だ。
世間知らずもいいところ。あたしは呪術師と五条のお屋敷の中で働く事以外には疎くて、今思えば、荒波にさらされず大切に守られていたような気がする。
つわりも決して収まっているわけではない。不動産屋を巡る途中で気持ち悪くなり、慌ててコンビニのトイレに駆け込み、吐いてしまった。
水分だけなんとか補給して、あと2件、別の仲介業者を回ってみたけれど結果は同じ。知らない土地でうろうろして、足が棒のよう。
普通の体じゃないからなのか、あまり食べていないからかなのか疲れやすい。ホテルに戻るとすぐにベッドに横たわった。こんなふらふらな状態で体は大丈夫なのかな。
東京で一度だけ産婦人科に行ったっきり、診察を受けてない。赤ちゃんは無事なのかな? 色んな事考えちゃって泣きたくなる。まだ五条家を出て1日しか経ってないのに。ほんとに情けない。
天井をじっと見つめていたら、瞼が重たくなってきた。悟くんの王子様みたいなスーツ姿が目の裏に焼き付いている。そんなの目に浮かべながら知らず知らずにあたしは眠りについていた。