第10章 別れ
夕凪がいなくなって1週間。縁側で交わした言葉を思い出す。
「悟くんだって好きっては言わなかったじゃん。見えるところにいて、側で俺のこと見ててって言っただけ。ちゃんとそれは守るんだからいいでしょ」
夕凪は原点を大事にしていた。夕凪にとって重要な日になったお盆の夜。初めて夕凪のことを抱きしめた日だ。置き手紙を読み返してみても、あの日の僕の言葉が夕凪の心を動かして、それで誓いを立てたって書いてある。
もし、あの時、僕が好きって言葉を出してたら、好きだから側にいてってはっきりそう言ってたら、君は、夕凪は、今も……僕のそばにいてくれた?
思っても仕方のない後悔がよぎる。
――夕凪がなぜいなくなったのか今もその理由がわからない。僕から離れなくちゃいけなくなった理由っていったいなんだったんだ?
関東全域まで範囲を広げて夕凪を探してみるけど見つからねぇ。いったい何処に行ったの? 本当はもっとあちこち探しに行きたいけど、夕凪の母親が言った「探さないで」って言葉が、引っ掛けられたフックみたいに、時々僕を動けなくする。
夕凪の母親に残した置き手紙にあった彼女の言葉。
"もし彼が何か聞いてきたら探さないでって言っておいて。"
捜索することに少し迷いも生じていた。