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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第10章 別れ


「っ! さと……五条さん、大丈夫です。あたし運びますから」
「つき当たりの部屋?」
「困ります。あたしが運びます」
「携帯取りに来たついで」

 夕凪は困るって言って焦ってる。わかってる。これは僕がやるべきじゃないってことってぐらいわかってるけど、ほっとけない。会場内にいるどんな女より夕凪が愛おしい。

「僕がこれ持ってうろうろしている方がまずいだろ? さっさと場所言って」
「……控室の横の空室! 急いでほんとに、ほんとに!」

 言われた場所まで行って、扉をあけ、室内に紙袋を置いた。久しぶりに夕凪の顔を近くで見た気がする。

「夕凪、なんか痩せた?」
「ダイエット中なの。成功してるならよかった」

 よかったなんて顔してねぇーじゃん。夕凪のダイエットなんてこれまで成功した試しねぇし、そもそもする必要なんかねぇ。

 それに……自分から別れるって決めてなんでそんな顔してんだよ。もっとこう、夕凪は、本来、溌溂として元気だ。もし気持ちがふっきれて、ただの使用人の娘として五条家にいるって決めたんなら、きっと明るく笑ってる。

 僕を振ったのは夕凪だよな? なに振られたみたいな顔してんだよ。

「……なぁ、夕凪」
「悟くん戻って、皆さんお待ちかねだから」
「もう一回だけ、僕と話しない? 婚約のこと」

 夕凪が部屋を出ようとした時に、もう一度夕凪をひきとめた。今夕凪と話をしてわかった。この後、僕はどれだけ婚約者候補と時間を過ごそうと、きっと誰も選ばない。

 僕の心の中に沸き起こってくるのは、夕凪が好きだっていう気持ちだけ。それがさらに強くなるだけ。すべて夕凪と比較してしまうだけ。


「まだ夕凪の事が好きなんだけど」


 本音を告げた。ドアノブに手をかけた夕凪の動きが止まる。俯いたままだ。

 軽く震えてるように見えるけど、僕に好きって言われることは夕凪にとってもう迷惑だった? うぜぇ元カレになってる? 拒否られる覚悟をする。

「わかった。今晩、お屋敷に戻ったら。あたしも……悟くんに相談したい事ある」

 ドアノブに手をかけたまま振り返った夕凪の目は、ほんの少し微笑んでいるように見えた。


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