第10章 別れ
そんなキリキリした感覚が抜けない状態でも、相も変わらず呪霊は発生し、その任務へと赴く。
失望や、やるせなさからくる負の感情で、いつも以上に呪霊ボコってたかもしんねぇ。こん時の僕に向かってきた特級呪霊は運が悪かっただろーな。3体とも鷲掴みにして、まとめて無量空処で祓った。
大量の呪力を消費してもなくなることがないから「もういねぇーの?」って煽ったけどそうそう特級呪霊なんて出るもんじゃない。
もっといたぶってから祓えばよかったな。行き場のない気持ちを抱えて五条の屋敷に戻る。
もう一度夕凪と話がしたかった。少し日が経てば冷静に夕凪の言ってることを理解できるような気がした。
冬にしては珍しくしとしとと雨が降りしきる日。屋敷内を歩いていると夕凪が縁側の廊下に座って外を見ている。
久しぶりにその顔を見た。座って雨を見ている姿に小さい頃の夕凪が重なる。物思いにふけるような横顔でたまにそうやって雨の雫が落ちるのを見てた。
夕凪の隣に腰を下ろして同じように軒先から落ちてくる雨の雫を見る。
「なぁ」
「ん?」
「僕は夕凪の変化に気付いてなかった……アイツん時みたいに。夕凪に何があったの?」
「あたしは、夏油先輩とは違うよ。これからも悟くんの側にいる。離れないって約束したし」
「全然、意味がわかんねぇ、それって好きって事なんじゃねーの?」
夕凪は僕を見ることはなく、ただ側にいるってしか言わねぇ。悟くんもお盆の夜、好きだなんて言わなかったでしょって、側にいる約束は守るからいいでしょって屁理屈みたいな事を言う。
夕凪を誰にも渡したくないって言ったけど、わがままだとかずるいとか言われて、まるで話が噛み合わねぇ。
夕凪も僕の事が理解できないみたいだった。なぜこうなったのか、どこからおかしくなったのか、僕はやっぱりわけがわからないまま、ただ夕凪の言葉を受け止めるしかなかった。