第10章 別れ
分家の誰かに見られたって別に構わねーし僕はその夜、着物姿の夕凪を部屋まで手を引いて連れて行った。
相変わらず夕凪は「ちょ、ちょっと」って周囲を警戒してたけど以前ほどではなさそう。そして、とうとう夕凪が、僕の部屋で、不安ではなく嬉しそうに幸せそうに口角を上げながら口を開く。
「ねぇ、悟くん?」
「なに?」
「ひょっとして、ひょっとしてだけど……あたしが婚約者だったりする?」
「あぁそうだよ」って肯定して今すぐ彼女を抱きしめたくなる。喜ばせたくなる。必死で我慢してる僕は偉すぎだろー。夕凪は婚約者だったらいいなって顔してる。
「そんなこと聞かれても困るよね。遺言に関しては何も言えないんだもんね」
「もうそろそろわかるよ」
僕が答えると、夕凪の目尻が下がり、逆に口角はきゅっと上に向いた。楽しみにしてるって期待感が見えた。
もう少しだからな、夕凪。僕が19になったら婚約の儀に向けて準備が始まるから。そうやって笑って僕のこと信じてて。そのまま僕のこと好きって思って過ごしてて。
◇
漫画みてーな話だけど、遺言が開示されてから全て順風満帆に事が運んでいて、僕と夕凪はとてもうまくいっていた。