第10章 別れ
「だから、そんな事したら五条家にバレるから!」
返ってきた第一声はこれだ。まぁそうなるよな。何も知らねーんだから。「婚約者が決まってるのにまずいよ」って心配してる。
しばらくすると「行くんなら奥様に許可をもらおう」って言い出して、僕を連れて母親の元へと向かう。
ハワイに同行する理由を必死で説明してる夕凪の顔が真剣で可笑しくて可愛い。あっさりOKもらえて、あっけにとられた顔で僕を見る夕凪もまた可愛くて、その顔のまま「ほら行くぞ」って連れ出した。
その後も夕凪は驚いてばかりだったんじゃねーのかな? 一体どうなってるの? って思うようなことばかり。
一番驚いたのはやっぱり誕プレだろ。夕凪は遺言開示の後もこれまでとなんら変わらず付き合ってる僕に対して時々不安になるようだった。
「ねぇ……ほんとにこのまま付き合っていていいの?」
「問題ないって言ってんじゃん」
こんなやり取りが突然起こる。顔を曇らせる。
好きとか愛してるとか毎日言えば安心すんのか? けど、これまでの僕を知ってる夕凪なら逆に不安がるだろ? 悟くん、いったいどうしたの? 怖い! って。
やっぱ目に見えるもんがいいだろ。そう思って誕生日に、わっかりやすく豪華なプレゼントをする事にした。
着物は夕凪が前からずっと欲しがってたから喜ぶだろう。それにただの彼女にこんなもんやらねぇよな。
もういっそのこと婚約者だって匂わせてもいいんじゃねぇかって気がする。夕凪は鈍いから多少大袈裟にやるくらいで丁度いい。