第1章 出会い
ぽかぽかとお日様の光があたたかい。ふと目をやるとモンシロチョウが飛んでいる。こんな広いお庭のどこであなたは羽を休めるの?
気になってあたしはそれを目で追いかけていく。
まあるく刈り込まれた緑の生垣にふらふら、赤、紫、黄色、お花の間を抜けるようにふらふら、せせらぎの流れに逆らう様に羽ばたいて、そこに掛かる石橋の上をふらふら。お池の周りをふらふら。
よほど楽しいのかその白いひらひらはどこにも落ち着こうとはしない。
お池をぐるっと一周した時、ようやくチョウは石で出来た傘みたいな場所に着地した。
この石は灯籠っていう名前らしい。そのすぐ側に目をやると、ひとりの男の子が立っている。あたしはその男の子と目が合った。
「あいつ」
その子から言葉が放たれると、彼の周りを囲っている大人たちが一斉に視線をこちらに向ける。あたしとおかあさまを値踏みするように見てきてる。
いくらあたしが幼児だって本能的にわかる。この男の子はすごいいじめっ子だ。
生意気そうな子。あたしと変わらない背丈のくせに、周りの大人をしゃがませて、気を使わせてる。
男の子なのに綺麗な顔してる。女の子みたいなさらっとした白い髪して、きっと自分の見た目がいいのを知ってる。
遠くから見ても際立つ、空が敷き詰められたような瞳はみんなを虜にしていたけど、あたしはちょっと怖かった。身体を透かして見えない何かを見ているようで。
全く表情を変えないままその男の子は沢山いる女の子の中からあたしのことを指さした。
それが悟くんとの出会い。
あたしはこのとき5歳だった。