第1章 出会い
目の前に広がっているのは、びっくりするほど大きなお庭。あたしのお家なんかよりずっと広い。
お散歩するだけでいいからとおかあさまに手を引かれ、一歩足を踏み入れた。
おめかししたあたしを、小鳥さんたちが出迎えてくれたみたい。ピピピッピって愛らしい歌声が空から降って来る。
それはまるでベッドメリー。頭上をくるくる舞っている。
目が開かないのは、降り注がれる空の光が眩しいせいだ。とってもいいお天気!
ぼーっとお空を見ていたら首が痛くなっちゃって、ゆっくり前に向き直る。続いて目の前に現れたのは、ピンクの髪の毛に覆われているみたいな大きな木。
「しだれ桜よ」とおかあさまが教えてくれた。風がそよそよって吹くと、枝が揺れてそれはまるで桜のシャワー。200歳の木なんだって。今日は驚いてばかりだ。
そんなの見ながら五条様のお庭を歩いていたら、履き慣れない草履と着物の裾ですてんと転びそうになった。
「ほら、しっかりして」とおかあさまはあたしの手をぎゅっと引き上げて注意する。
石畳みを慎重に歩くけど、石と石の隙間に足を取られそうで、あまり上手に歩けなくて、あたしはお庭に置かれた大きな岩の近くでズンっと仁王立ちをした。