第10章 別れ
名を綺麗に書けるに越したことはない。宿題を出されたので真面目なあたしは、離れに戻ってノートを広げ、少し練習をしてみる。
尊夕凪
尊が難しい! 先生のお手本みたいにうまく書けない。画と画の間がくっついちゃう。でも五条家の歴代の奥様たちは、みんな字がお上手だったなぁって思い出すと、よし頑張ろうって思える。婚約者って決まったわけじゃないけど、妄想突っ走ってるからモチベが勝手に上がる。
尊夕凪 尊夕凪
バランスも難しい。もっと書きやすい名字だったらよかったのにな……。
そうだ! ちょっと試しに書いてみていいかな? そんな、深い意味なんかないから、うん。
五条夕凪
書いちゃった。
恥ずかしっ! 恥ずかしい!! 恥ずかしい!!!
え! 似合わない? 漢字の雰囲気いい感じじゃない?
五条夕凪 五条夕凪 五条夕凪 五条夕凪 五条夕凪
5回も書いてしまった! なんだろ、幸せな気持ちになる。文字に思いが乗るってこういうこと!?
いや、単に尊よりも書きやすいだけかも。
じゃあ、試しに連名で、と。
五条悟
五条夕凪
きゃ! やばい! やばい! なにこれ、死にそう。並べた時の破壊力が核爆発レベル! にやけちゃって顔の緩みが止まんない。うまく書けたし、これは記念として永久保存だ。