第10章 別れ
そう思い、ノートからここだけ1ページ丁寧に千切って机の引き出しにしまおうとして手を止めた。そうだ、何か奥様みたいに文字を添えようかなぁ~。
五条悟
五条夕凪
末永く幸せでいれますように。
一言添えた。素敵かも〜。自分で書いて自分でうっとりしてるんだからどうしようもない。けど、先生に言われた通り、願いをこめると、そんな風にいれるような気がした。
まるで結婚してるみたい。自分でも馬鹿なことしているなぁとは思うけど、誰も見ないしいいよね。
かなり没頭していたあたしは、集中しすぎてカチャってドアが開く音に、全く気付いていなかった。
「夕凪いる?」
振り返ると悟くんが部屋に入ってきてる。
「さ、とるくん! どしたの? 高専は?」
「五条の用事で戻ってきた」
「前から言ってるけど、勝手に入るのやめよう、ノックしよう」
そう言いながらあたしは背中で背面の机の引き出しをすーっと閉める。