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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第8章 夜空


「わかった。聞いて」
 夕凪が息を吸う。

「悟くんの好きなところは沢山ある」
「ん」
「でも一番好きなのは」
「ん」
「あたしがどうしようもない時、ひとりで踏ん張れない時に支えてくれるところ。信じられないくらいあたしのど真ん中に入ってきて、引っ張ってくれるところ……今みたいに」

 まるで優しい旋律を奏でるオルゴールみたいに夕凪の声が響く。そうやって俺のことを好きだと言ってくれた事が嬉しい。けど、俺はそこまで出来たやつじゃねー。夕凪は俺のことを過大評価しすぎだ。

 これまで確かにそういう事はあったかもしれない。けどそれは意図的じゃねぇ。ガキの頃も何度か夕凪を助けた事があるように思うけど屋敷の中で偶然目についたからそうしただけ。

 夕凪をじっくり見てたわけじゃない。やりたいようにやってた結果そうなっただけなんだ。

「俺はそんな風に夕凪のこと支えれてる? けどそれはたまたまそうなっただけで、俺はそんな立派な奴じゃねぇよ。灰原なら褒めすぎだってツッコミいれてるだろーな」

「珍しく弱気なんだね……もっと言えよ、他にはねーの? 全部言えって畳みかけてくると思ってた」

「俺も親友を失ってるからな。そんな足音がしてることにすら気付かなかったし、何も出来なかったんだよね。見えてなかった。それがなけりゃ夕凪が言うように言ってたかもな」

 俺たちは2人揃ってこの夏、親友を失ってた。死別と離別の違いはあれど、いつも当たり前みたいにいた人間が日常からいなくなってるっていう虚無感みたいなものは同じだ。

 教室に入れば、まだその親友の席は俺と硝子の間にあって、「悟、また遅刻か」って声をかけられる幻影が浮かぶこともある。

 もうそろそろ机と椅子を片付けて俺と硝子だけにするべきだ。アイツは呪術規定第9条を犯した処刑対象だ。わかってる。けどまだ手をつけられないままでいる。

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