第8章 夜空
「あたしと悟くんの事、興味あったみたいで、つい最近、五条さんのどこが好きなの?って質問されたんだ」
「ふうん、で、オマエはなんて答えたの?」
「答えてないの。そんなのすぐに答えられないし普通言わないでしょ、でも灰原がひかなくて、じゃあ尊より強くなったら教えてって縛りをかけてそのまま逝っちゃった。それが最後の会話」
夕凪はまた空を見た。遠く遠くを見るような目で。ガラス玉みたいな瞳の中に花火の光が反射して点描のように映り込んでる。
縛りをかけたまま灰原はこの世を去り、それが呪いとなって夕凪の中で生きているのかもしれない。
「じゃあ俺に言えよ」
「え?」
「俺の好きなとこ教えて」
「悟くんに、悟くんの好きなところを?」
「灰原に言えなかったんだろ? それがずっと心残りなんだろ? 親友なのに何ひとつ出来なかったっていう気持ちが灰原の最後の言葉と重なってオマエの中の呪いになってんだよ。もし、あの時質問に答えてれば、灰原は生きてたんじゃないかって自分を責めてんだろ」
夕凪が俺をまっすぐ見つめる。俺の言葉を落とし込んでる。けど、今俺が言ったことは俺自身にもブーメランになって跳ね返ってきた。ざらつきが心のどっかに今も留まっている。
親友なのに何ひとつ出来なかった。もし、あの時、無下限の実験してる時、俺が気づいていたら、あの惨殺が行われた任務に一緒に同行してたらアイツは呪詛師にならなかったんじゃねーかって。