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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第8章 夜空


 花火は10000発くらい打ち上げられるらしい。一番見えやすいところは人がたくさんいすぎるからって言って、夕凪は少し離れたところを選んで腰を下ろした。膝を立てて揃え両脚を両腕で抱える。俺もその隣に腰を下ろした。

 ヒューーーーーッと口笛じみた音が空中に舞い上がりドンと爆裂音が鳴る。秋の夜空にまるで大輪の花が咲いたかのようにパァーッと赤光が輝いた。

 その美しさに目を奪われる数秒後にはその赤光は緑や黄や紫に変化し、なだれ落ちるように闇の中へと消えていく。

 星のような形が出来たかと思えばパッと消え次はハート。巨大な柳のような黄金の光は、地上スレスレまで垂れ下がり残影の余韻が残る。

 夕凪がわぁって声を上げると次はドンドンドンという連続する破裂音と共に無数の小花が咲いて夜の空を彩った。

 夕凪の横顔が暗闇の中、花火の閃光で時々映し出される。その輪郭や目鼻立ちは、花火に負けないくらい美しいと思うし、随分と大人っぽくなった。色気も増したような気がする。とにかく、もう子供じゃねぇ。

 10代の俺たちは自分でも気づかないくらい知らず知らずのうちに変化を重ねてるのかもしれない。

 大量に花火が打ち上げられ少し火薬の匂いが立ち込める。夕凪が静かに口を開いた。

「花火ってさ、お祭りのパフォーマンスなのかと思ってたけど、そもそもは死者を見送ったり魂の鎮魂のために打ち上げられたものなんだってね」

「あぁ、そうらしいな」

「ねぇ、悟くん」

「ん?」

「あたし、親友失っちゃった」

 唐突に口から出されたその言葉は、僅かな沈黙を生んだけど夕凪は沈んでいる様子はない。普段の話し方と変わらないトーンで空を見てる。おそらく花火を。

「灰原のことか」
「うん」
「それで花火を見にここに?」

 俺と目が合うと儚げに微笑む。こんな話をしてるけど泣いてはいない。

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