第8章 夜空
「可愛いお姉ちゃん、たこ焼き出来たてどう? サービスで2個おまけにつけとくよー」
「超イケメンのお兄さんもいるけど俺ももらえるよね?」
ナイスガイの登場に明らかにひきつった前歯の欠けた男が、ぎこちない笑顔でたこ焼きの舟を2つ出してきた。夕凪に手渡そうとするから俺が受け取る。
その小さいメモみたいなの見えてんだよ。連絡先でも書いてあんだろ。俺に舟を渡す瞬間そいつはメモを握りつぶしてた。
なんも知らねぇ夕凪は呑気にたこ焼きを食い始める。
「あっつー! 中が熱すぎて食べれない」
「って言ってしっかり食ってんじゃん」
「吐き出したら汚いから我慢してんの、あふっ、あふい」
『たこ焼きみたいな頬っぺたしてたこ焼き食う彼女』そんなタイトルつけてどっかの写真展に応募したくなる。
"カシャ"
一応、写真撮った。入賞出来んだろこれ。
「はい、悟くん食べる?」
「あちぃんだろ? 自分が食えねぇもんを俺にくれるの?」
「ふぅーふぅーふぅー はい」
「外側じゃなく中身が熱いんだろ? そのふぅは意味あんのか?…………まぁ、食うけど」
ふぅふぅしてるのが可愛いくて、爪楊枝持って「はいっ」って口元持ってくるから俺は猫舌だけど食ってやった。最近コイツを甘やかしすぎな気がする。でも彼氏ってこういうもんだよな。甘やかすもんだよな?
合ってるよな?……なんて尋ねれる親友はいねぇのに誰に聞いてんだか。
気になった食いもんをちょこちょこ食べ歩きしながら河川敷まで進む。射的やスーパーポールすくいも気になったけど、いい場所おさえたいからって夕凪に連れて行かれた。