第8章 夜空
花火なんて夏の風物詩なんじゃねーの? って思ってたけど、10月に入ってから行う秋の花火大会っていうのもあるらしい。
情報誌で知ったのか、夕凪が急に見に行きたいと誘って来た。そういえばこのところデートらしいデートはしてなかったよなーと思い返す。
この夏は呪霊が蛆のように湧いて出て、多忙を極めてたから仕方ない。それに、俺もオマエもそれどころじゃなかったしな……。
俺たちは花火が打ち上げられる河川敷まで足を運んだ。2人とも任務後だったから実に味気ないけど制服のまま向かう。
花火会場の近くの神社では縁日が行われており、屋台が出ているとの情報を、雑誌を見ながら夕凪が教えてくれる。そこに寄ってから花火を見ようってことになった。
秋の夜は気候も過ごしやすくてなかなか夜風が気持ちいい。屋台にはすでに温かい食べ物なんかも出ていて、フランクフルト、今川焼き、焼きそばの出店は列をなしている。提灯も飾られており賑やかな様子だ。
はぐれないように夕凪の手を繋ぐ。もう夕凪は手を繋いでも顔を赤らめる事はない。付き合って1年以上が経ち、随分と彼女らしくなった。
俺の隣に立つことも慣れたみてぇで「じろじろ見られる」ってしきりに言ってたあの口癖もそういや最近言わなくなったな。
便所行って戻ってきたらガッツリ夕凪が声かけられてる。ナンパ? じゃねぇか……。