第7章 ★誕生日
「なに?」
「……あ、えっと、あー、じゃなくて」
しばらくこんな返答を繰り返していると、あたしの表情から何か察したのか「こっちで聞くわ」って言ってあたしの手を引いて、角にある部屋の方向に歩き出した。途中サングラスを外して収納する。
ドアを開けてその部屋の中に入ったら、そこは、悟くんの、寝室で……右手に大きなベッドが置かれていて……思わず握られてた手をぎゅーってまた強く握ってしまった。ドキドキが高速になって、ドクッドクッドクッドクッって鳴り止まない。
目のやり場に困る部屋。ベッドが主張しすぎてる。大人3人くらい横になれそうな大きなベッド。ここで聞くって言ったけど、ここに連れられてきたって事は……。
よいしょって悟くんがあたしをベッドの上に乗せて座らせた。ぐいって寄られて移動させられヘッドボードにもたれて足を伸ばして座る。ベッド全体にやわらかな間接光が落とされていて、悟くんが暖色に染まっている。
「なぁ、俺、誕生日に欲しいものあるんだけど」
「あ、あの……」
悟くんが更にずいってあたしに近づいてきた。両足の間に片足を割り込ませて滑らせてきてる……。もう少し近づけばキス出来るような距離。ヘッドボードを背に悟くんの両腕に挟まれる。ドクッドクッっていう脈がさらに速くなったのを感じた。
「あの、あたしがあげたいものと、悟くんが欲しいものは……同じ、かな?」
「どうだろうな」
「いいのかな? 五条のお屋敷でこんなこと。悟くんの部屋でこんな」
「ここほど誰にも見られなくて何も聞かれねぇ場所はないだろ」
「でもなんだか恥ずかしくなってきた」
「そういう顔すると余計欲しくなるんだよ」
悟くんがぐっと顔を寄せてきた。薄暗いけど近づいてくるまつげが羨ましいくらいバッサバサで美しい。
「俺が欲しいのは――」
「――あたし?」
「正解。抱いていい? 夕凪俺のものにしていい?」
「うん……そのつもりだったから」