第7章 ★誕生日
廊下のつきあたりで悟くんが手をかざすと、結界の中にぬぷっと手が入り込む。あたしは手を繋がれてそのまま一緒に中に入った。
襖を開けると記憶の中にあった通り部屋の中に部屋がある。五条家はお金持ちなんだなぁとあらためてわかる部屋の広さ。和室の奥にリビングルームみたいなソファーとテレビがあって、それ以外にまだ部屋がいくつか。未使用に近い勉強部屋もあるはず。
「そこ座れば?」
悟くんが指さしたソファーに腰を下ろす。彼は冷蔵庫からカットフルーツの盛り合わせを取り出してきた。部屋に冷蔵庫があるとか、もはや部屋というよりドラマに出てくるようなマンションの一室だ。
「もらったやつだけど食う?」
「おいしそう! 誕生日にもらったの?」
「まぁそんなとこ」
「いいの? じゃ、いただきます」
まるであたしがお祝いされてるみたい。あたしも悟くんにプレゼントしたいんだけどな……。カットされた苺をフォークでさしてパクッて口に入れながら考える。
食べてたら髪がほんの少し横に揺れた気がした。隣りに座る悟くんを見ると、あたしの髪からわすがに毛束をすくいとって指でいじってる。
「髪、伸びたな」
「……え? あ、うん、また少し切ろっかなぁって思ってたとこ」
「夕凪のこの髪の色、いいよなぁ」
「あ、りがと」
なんだろ、恥ずかしい。付き合う前は乱暴に頭をわしゃわしゃとされて髪がぐちゃぐちゃになる事はあっても、こんな髪の触り方をする事はなかった。
ひょっとして……
誘われてる?
わかんない。圧倒的な経験不足でわかんない。雑誌になんて書いてあったっけ? あぁぁ、3回も読んだのに!