第7章 ★誕生日
あたしが無言のままでいるから、悟くんが痺れを切らしたみたい。
「彼女なのにお祝いそんだけ?」
また"彼女"とかそんな単語を露骨に使い出した。ねぇ、あたしがお屋敷で身をひそめてた意図を汲んでよ!
「シッ、シッ、シーーーだってば、だから」
「なぁ俺のこと舐めてんの? 誰かいたらすぐ気取るんだよ。誰もいねぇから言ってんの」
周囲を見渡したけど確かにネズミ一匹いない。
「俺の部屋来る?」
「う、ん」
唐突に誘われた。少し戸惑いながらも返事する。実はあたしも同じこと考えてた。悟くんのお誕生日のお祝いをするのに一番、誰にも見られず安心して過ごせるのは悟くんの部屋だろうなぁって。だからどうしたら部屋に行けるかなぁって考えてた。
悟くんの部屋……それは誰でも簡単に入る事が出来ない結界が張られていて五条家のお屋敷の中でも深いところにある。悟くんの家族と昔から五条家に仕えてるほんの一握りの使用人しか通れない結界。
離れは、鍵はかけれるもののお母様がいつ来るかわからないし、風通しのいい小さな木造のお屋敷だから縁側の横でじっくり耳を澄ませば、喋ってる内容も聞こえない事もない。
悟くんのお部屋は、小さい頃、遊んでる時に数回連れられて行った事があるだけ。あまり覚えてないけど部屋の中にまた部屋があるようなとんでもない広さだったことだけ覚えてる。ここ数年はもちろん入ったことはない。