第6章 キスの味
この日……俺が最強に成った日は、俺だけでなく夕凪も激変していた。少し考えさせてって言った新歓の帰りとも、1年半待ってって返事をしたあの教室での夕凪とも違っていた。
夕凪が愛しくてたまらない。愛してるのは俺の方だ。ずっと夕凪が欲しかった。
全然手に入んなくて、掴もうとしても、するりとどこかに抜けていって、抱きしめても、たとえあの日、夕凪とキスしていたとしても、満たされないような気がしてた。
けど、今なら、今のオマエならきっと……。
夕凪を見つめながら上体を屈める。いつもと同じ優しい花の香り。艶やかに潤う夕凪の唇に俺は触れた。
触れた瞬間、ほんの少しびくっとしたみたいだったけど、構わず俺はキスした。ほんの僅かな隙間もないくらい密着させた。夕凪を離したくなくて、このままずっと、自分のものでいてほしくて。
俺のことを大好きって言ってくれたことが嬉しくて、がっつくみたいなキスしたかもしんねぇー。夕凪の唇を貪るように求めてしまった。これがコイツのファーストキスかもしれねーって思うと余計に気持ちが駆り立てられて、俺の色に染めたくて、もっとキスしたくなる。
さすがに、やりすぎだよなって少し冷静になって唇を離す。
「好き、大好き」
夕凪がもう一度告ってきた。俺が見た中で、これまでコイツと過ごして来た中で一番可愛い顔して幸せそうな笑顔を見せる。
寮で見た切ない顔じゃなくて俺が見たかったキスの後の顔はこっちだ。
「大放出だな。小出しにしろよ、慣れねーわ」
思わず俺も笑みがこぼれる。最後にもう一度だけ触れたくて俺は夕凪を引き寄せて彼女の唇に優しくキスを落とした。
――最強に成った俺の隣に今度こそ立って。
あのうどん食って思ったけど、オマエはもう五条家の人間みたいなもんだ。俺とオマエで一緒に五条家作っていこうぜ。