第6章 キスの味
夕凪も戸惑ってるように見える。けど冷静になれば俺の行動の意図を汲み取れるだろ。
「寝るから早く出て行って」
俺は夕凪を寮から出した。いつまた俺の気が変わってキスしたくなるかわからねぇ。次はキスだけで止まらねぇかもしんねぇ。その前に出て行って。
夕凪は遊びじゃねぇから、適当に付き合った彼女とは違うから、ちゃんと幸せなキスして、キスした後、笑っていられるようにしたいってただそれだけ。
夕凪が自分の口で「遺言の中身がわかるまではこのままで」って宣言しておきながら気持ちに流されて俺とキスしたら、理屈と現実の狭間で苦しむのは容易に想像出来る。
夕凪は頭ガッチガチだからな。五条家に顔見せ出来ねーとか、ぐだぐだ訳のわかんねーこと言うに決まってる。
既成事実で丸め込んで彼女にするのが俺にとっては手っ取り早いけど、こんな夕凪に合わせてしまってる俺は多分、相当、自分が思う以上に夕凪の事が好きなんだろう。