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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第2章 ただそれだけ


 ある日、そんな異様な術式の気配が学校内を黒い嵐のように駆け巡った。

 これに気付いているのは、多分あたしと悟くんだけだ。呪力が見えない学校の非術師のお友達は何も感じない。

 反射的にちらと窓の外を見る。

「あれって帷ってやつだ。何事?」

 学校のすぐ外には悟くんの護衛係が数名付いてるはずなのに、見当たらない。やられちゃったの? 

 よく見ると、校庭の隅の大木に矢が何本か刺さっている。そしてその近くに
……悟くんがいた。

 見た瞬間、席を立つ。あたしはたかだか9歳だ。状況を把握するなんて出来ない。ただ不安でいっぱいになって勝手に体が動いて教室を出た。

 先生はあたしのスピードに追いつけないからきっと追う事は出来ないし、今は怒られるとか考えてる場合じゃない。

 悟くんの元までひたすら走る。池まで競走させられていた日々のせいで、足はかなり速く動く。あたしの足、お願いだからもっと急いで!


 何かあったら連絡しろとだけ五条のおうちからは言われてる。そのために携帯も持たされてる。でも連絡してもきっと間に合わない。

 悟くんは呪術界の唯一無二。尊い存在。悟くんを守らなくちゃ。

 勝手にそう思う。それはきっと、五条家に住み込むようになった時から、使用人の娘として仕えるようになってから、少しずつ少しずつ、あたしの中に植え付けられてきたものだと思う。

 でも、今、あたしが走ってる理由はそんなんじゃない。

 一番あたしを動かすのは……そんなんじゃなくて……


 悟くんがいなくなったら嫌。
 そんな気持ち。


 悟くんの事は好きじゃないけど、嫌いだけど、明日も明後日もこれからもずっといるよね?


 走ってる間に悟くんのことを思い出す。なんで今こんな事を思い出すのかわからないけど、急に頭に浮かんでくる。

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