第6章 キスの味
七海と灰原は昨日から任務で沖縄に行った。呪詛師から星漿体を守るためだ。同じく沖縄で星漿体の護衛に当たっている悟くんと夏油先輩の後方支援的役割。
あたしも行きたかったけど、高専をガラ空きにするわけにいかないと言われ、東京に残るよう指示された。突発的な呪霊発生が起こる可能性も考えて、1年で一番強いあたしは残留させられたのだ。
護衛任務というのは難しい。自分の事だけでも戦闘中は必死なのに、戦いながら誰かを守るというのは集中力と繊細な呪力操作が必要となる。
術式で護衛対象を傷つけてしまってもいけない。悟くんの無下限の配下に入っていれば星漿体は守られるだろうし、夏油先輩の呪霊操術で援護すればおそらく問題ないだろう。
「大丈夫でしょ、俺たち最強だし」
そんな事言って悟くんは高専の門を出る前は自販機でジュースなんて飲みながらのんびり歩いてた。そんな悟くんに対してなんの不安も抱いてなかった。
悟くんから沖縄の写メが届く。何しに行ってるの? ってくらいいい顔して海で遊んでる写真。
安心してた。油断してた。七海や灰原も向かったし、夏油先輩と悟くんの最強コンビなら難しい星漿体の護衛も卒なくこなして「夕凪お土産〜」って帰ってくると思ってた。
もうすぐ午後3時。いよいよ天元様との同化が近づいてる。
先生達も少し緊張している様子で、悟くんたちとこまめに連絡を取りながら動向を追っている。
あたしは先日討伐した呪霊のレポを書きながら悟くんと夏油先輩の戻りを待っていた。教室には誰もいなくてひとりぼっちだったから、同じく高専内に残ってる家入先輩のところで過ごすことにする。
任務を終えたらきっと2人は家入先輩のところに顔を見せにくるだろう。それにこれは家入先輩からマンツーマンで反転術式を学べるチャンスだ。やり方を聞いてみる。
「ひゅーっとやってひょいだよ ひゅーひょい それだけ」
そんな風に言うけど全然わかんない。
負のエネルギー同士を掛け合わせるっていう時点でどういう感覚なのかが掴めない。うーんってその理論と実践を呪力を捻出しながら繰り返していた。
タダダダダン
突然、扉の外で大きな音がする。何かがぶつかったような音。